阿閦如来(あしゅく)

 

金剛界曼陀羅では中心の大日如来を囲んで四体の如来が配されています。五大日と合わせて金剛界五仏です。

北方が不空成就如来、西方が阿弥陀如来、南方が宝生如来、そして東方が阿閦如来です。

 金剛界五仏とは五智如来で仏の五つの智恵を示しています。阿閦如来が示しているのは五智のうちの「大円鏡智」。

これは鏡のようにあらゆる物事をそのままにこだわりなく映すという意味です。大日如来は全ての智恵の体現者ですから、阿閦如来はその四分の一をひきうけている仏といえます。ただし一般の信仰としては、阿閦如来は病気を治すというご利益がクローズアップされていました。これは東に位置することから、同じく東方浄土の教主であり曼陀羅には表現されない薬師如来と同体と考えられたためです。

 像は勿論如来形で、座像なら右手で触地印、左手は着衣の端を握った形。立像は片手をたらし、もう一方の手でやはり着衣の端を握るスタイルが見られます。あまり見かける仏像ではありませんが、片手で着衣の端を握る点がポイントとなります。