弥勒菩薩
梵名で妹坦隷那(まいとれや)といい慈から生まれたものという意味から慈氏菩薩とも呼ばれている。
普賢・文殊・観世音菩薩が仏教の教義上から見た理想的存在の菩薩であるのに対して、弥勒菩薩は実在の人間であって、釈迦の弟子となり教化を受けて釈迦について未来必ず成仏するという。現に兜率天(とそってん)にあって衆生を摂化しつつあり、釈迦入滅後五十六億七千万年後に再びこの娑婆世界に出現し龍華樹(りゅうげじゅ)の下で成道し、三会(さんえ、仏が成道の後衆生済度のため行う三度の六説法会)の説法を試み、釈迦の化益にもれた一切の衆生を済度する任務をもつ菩薩として考えられている。
将来成仏して釈迦の業績をつぐことから当来仏、弥勒如来(仏)ともいわれて如来形の造像も行われた。
像としては菩薩像中最も古くから造られてきたもので広隆寺像をはじめ、奈良時代までの造像は半迦思惟形(はんかしいぎょう)をとっている。頭部をやや前かがみにして、右手の臂を右膝の上に置いて指で軽く頬を支える様にしていることから之を思惟考える様であると見、右足は左膝の上に平らにのせているが、左足は台座から垂下しているからこれを半迦坐と見てこの姿を半迦思惟形といっている。
また、如来形像は諸仏通用の施無畏与願の印相である。