15 古の 人の植ゑけむ


歌 柿本人麻呂
 巻10−1814
筆 徳川宗敬

地図

人之殖兼
杉枝
霞霏「雨微」
春者来良芝
いにしへの
ひとのうえけむ
すぎかえに
かすみたなびく
はるはきぬらし
古の
人の植ゑけむ
杉か枝に
霞たなひく
春は来ぬらし
昔の人が植えたであろう杉の枝に霞がたなびいている。春は来たらしい。
 「霞霏」は必ずしも「たなびく」と詠めるはどうか。軽いものが長く伸びているのが「たなびく」だが、
漢語としての「霞霏」はちらちらとおぼろな点をなして存在しているのであって、必ずしも連続ではない。
敢えていえば、霞みに対しては「たなびく」という日本語しかなかったけれどども、そのたなびき方が、
普通ではなく、その中に光が層をなしてちらちらしていることを出したくて「霞霏」という字を使ったともいわれる。