不動明王

 

不動明王は梵名そのままに阿遮羅囊他(あしゃらなーた)と記す場合もある。

仏教ではこの尊に如来の使者としての性格を与え、真言行者を守護するものとなっている。

その姿は「不動、如来使者は慧刀・羂索を持ち頂髪が左肩に垂れ、一目にしてあきらかに見威怒身で猛炎あり、盤石上に安住している。額に水波の祖あり、充満した童子形である」と大日経で説いている。

早期のものは両眼見開き二牙を上(或いは下)出するものが多いいが、後のものは片眼半開し二牙を上下交互に現わすものが多い。

不動明王の利剣は威力の象徴であるが、これに倶利伽羅(くりから)竜王の纒いついたものが作られる。これを倶利伽羅剣と呼び、不動明王の象徴として作られることがある。

猛炎は一切の煩悩を焼き尽くすことを表し、迦楼羅鳥(かるら)の口から吐き出す火焔とされる。

迦楼羅鳥はインド神話にある想像の怪鳥でインド須弥山(しゅみせん)の北にある大鉄樹の梢を棲家として暮らしており、竜を捕らえて常食とし、頸に如意珠を巻き、口から絶えず大火焔を吐くという。

この怪鳥が仏教に取り入れられ、名を迦楼羅王と呼び観音二十八部衆の一つに加わっている。