愛宕街道

天龍寺の山門を左に見、北上した。やがて瀬戸内寂聴さんの住庵の表通りをすぎ、奥嵯峨の農村ーといってもその切れっぱなしーが残る野を右に見るうちに、左が化野の念仏寺の石段になった。この道はついに清滝へゆく愛宕街道である。京都のひとつは、愛宕のことを、「おたぎ」という。坂の勾配がつよくなり、道が樹木で暗くなった。
 街道をゆく(26)  司馬遼太郎 より