大聖寺地図

 京都御苑の北西、烏丸通に 面する大聖寺。この付

近は足利義満が造営した邸宅·室町殿(花の御所)の跡地

である。出家した皇族や公家の女性らが営んできた尼門跡

で、寺寺御所ともいう。今は臨済宗の単立寺院。

 後光厳天皇(在位1352~71 )の擁護後見役を務めた

無相定円尼が創建。後円融天皇(在位1371~ 82 )の皇

女·護溪理栄宮から光格天皇(在位1779~1817)

の皇女·普明浄院宮まで24代門主を内親王が務めた。

所在地はしばしば移り、1697 (元禄10 )年に、今の地

に定まった。現在の本堂は1943 (昭和18 )年、東京

青山御所から移築された。

 悲開寺院だが、その日常や歴史は前門主で。2006

年、96歳で死去した花山院慈薫さんの随筆集『あやめ艸日

記』(淡交社)からうかがえる。米コロンビア大のバーバ

ラ·ルーシュ名誉教授らの尽力で英訳もつけられ、ニュー

ヨーク·タイムズのホームページでも紹介された。

 寺では今も御所言葉が使われる。金澤東雲門主は「たと

えば、豆腐は『おかべ』、徒歩で行くことは『おひろいで

参ります』などと含います」と教えてくれた。

 皇女らの宗教儀礼の場であり、和歌や古典文学を学ぶ文

化の拠点でもあった。すごろく,かるた、貝合わせ、香道

具などが残り、御所文化を今に伝える。
2010-2-13朝日新聞(大村治郎)