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深泥池地図

 
 深泥池(みぞろがいけ)は,面積約9ヘクタール,周囲約1.5キロ

メートルの大きさで,市街地に接する場所に位置しているにもか

かわらず,現在でも氷河時代以来の動植物が生息する大変貴重な

池です。

 京都盆地は,気候的には暖温帯に属しますが,この深泥池には,

東日本北部の冷温帯に成立するはずの高層湿原が残っているた

め,西日本に残る数少ない高層湿原として,昭和2年(1927)に深

泥池水生植物群落として国の天然記念物に指定されました。また,

その後の調査で動物についても稀少なものが多く生息しているこ

とが判明し,昭和63年(1988)には,昆虫等の動物も含めた深泥

池生物群集に名称が変更されました。

 
上善寺⇒⇒⇒
   

◆深泥池の浮島

 深泥池の不思議のひとつに浮島があります。池の中央に広がり,
池全体の3分の1を占めています。
 この浮島の下には水の層があ
って,水面に浮いていることが確認されています。

 浮島は水温や水質の関係で,有機物の分解が遅く,植物の遺体が分解されずに堆積し,その上に

ミズゴケや種々の植物が成育しています。また,池の底には分解せずに沈んで泥炭となったミズゴ

ケが堆積していますが,

その分析の結果,深泥池は約14万年前から存在していたことが判りました。

 この浮島は季節により上下に変動しています。夏は浮かび上がり,冬は沈んで冠水します。冬に

冠水する平坦部分(シュレンケ)にはミツガシワやカキツバタ等が成育し,冬に冠水を受けないや

や高い部分(ビュルテ)にはアカマツ·ネジキ等の樹木が成育しています。


◆深泥池の植物

深泥池に生育する植物の多くは,高層湿原に由来するものであるため,本来は北方系の植物であ

り,中には,ホロムイソウのように世界的な分布の南限である種類も成育しています。

 浮島に成育する代表的な種類としては,アゼスゲ(花色:白色,花期: 4月), ミツガシワ(白色,

4月),カキツバタ(淡紫色, 5月中旬), トキソウ(淡紅色, 5月後半~6月初), イヌノハナヒゲ

(赤褐色, 7月~10月),サワギキョウ(青紫色, 9月後半~10月)や,モウセンゴケやミミカキグサ

といった食虫植物があげられます。

 また,浮島周囲の水面(開水面といいます)には,ジュンサイ(紅紫色, 6月下旬),ヒメコウ

ネ(黄色, 6月~10月)や食虫植物のタヌキモ(黄色, 7月~9月)が成育しています。


◆深泥池の動物

 深泥池に生息する動物の代表は昆虫です。中でも, トンボ類は約60種類確認されています。

 また,全国的にも珍しい種類を含むものとしては,ゲンゴロウやアメンボの仲間があげられます。

 他にも, ヒメコウホネを幼虫の餌とするミドロミズメイガ, ミツガシワの花の蜜を吸うハナダカ

マガリモンハナアブ等のハナアブ類があげられます。

 昆虫以外では,水中で生活するミズグモを代表とするクモ類,マガモ,ヒドリガモ等の冬島を代

表とする鳥類が多く,特に冬場のカモ類は岸辺から肉眼でもよく観察することができます。