東鳴川町公民館地図

 

 奈良市東鳴川町は京都府境に近い小さな集落です。公民館と一体

の小さなお堂に、地域で守り伝えられる重要文化財の仏像があります。

 手にした縄「羂索」ですべての人を救うという不空羂索観音坐像

です。きりりとした表情ですが、体つきは均整がとれて穏やかで

す。像高約1 1世紀末から12世紀前半の作と考えられています。

 三つの目と8本の手があり、肩に鹿皮をまとう姿は興福寺南円

堂の不空羂索観音坐像と同じです。平安後期に藤原氏の要人がし

ばしば南円堂本尊を模造した記録があります。東鳴川の像は、南円

堂が1180 (治承4)年に焼失する前の本尊を写したとみられます。

 地元にあった興福寺の子院から移されたと伝わります。一帯が奈

良市に合併された際に貴重なものと分かり、重要文化財に指定され

ました。博物館に収蔵する案を、「火災よけにお参りさせてもろて

るんで」と断ったそうです。今も毎月法要を営み、月1度だけ一般

公開されます。

 南円堂の現在の像は運慶の父康慶の作で、毎年10月17日に公開

されます。東鳴川の像とは鹿皮のあしらいや表情が微妙に異なりま

す。二つの像を比べて、失われた本尊に思いをはせるのも楽しそう

ですね。
 2017-12-1  朝日新聞
 (古沢範英)