大法寺地図

   
 
     
     

 大法寺三重塔は、「見返りの塔」という名で親しまれている。この名は、

塔の姿があまりにも美しいので、思わずふり返るほどであるという意から、

つけられたのであろう。ではこの塔はどうしてそれほど美しいのであろう

か。その秘密をさぐってみたい。それがまた、この塔が「国宝」に指

定されている理由をあきらかにすることにもなろうと思われるからである。

この塔をよくみると、初重が特に大きいことに気づく。これがこの塔の

最も大きな特色である。これは、二重、三重で組物を三手先というい

ちばん正規な組み方としているのに対し、初重だけは、少し簡単な二

手先にしたので、その分だけ平面が大きくなっているからである。この

ようなやり方は、この塔のほかは奈良の興福寺三重塔があるだけで

きわめて珍しいことである。塔は姿が平凡になりがちであるが、こうす

ると形に変化がつき、おちついた感じが生じてくる、まことにうまいやり

方といわなければならない。

このように独特の意匠が用いられているので、かえって、細部ではほ

とんど特別な考慮がなされていない。この塔は、墨書によって正慶二

年(1333)に造営中であったことがわかる。これはちょうど鎌倉時代

から南北朝時代に移る過度期に当たっている。このころには、装飾的

な彫刻を各所につけるのが通例であるが、この塔では、初重中央間の

簡単な蟇股以外、装飾細部を一切用いていない。まことにきまじめな

手法をとっている。しかしそれらにみられる手法は、きまじめであるだけ

に、正規のものであって、地方的なくずれが少しもみられない。組物内

部に書かれてあった墨書によると、天王寺の大工四郎某のほか、小番

匠七人が来ている。天王寺とはおそらく大阪の四天王寺であろう。地

方的なくずれがまったくないのも、このように中央の工匠によって造営が

行われたからであろう。

なお、この塔の美しさを論ずるには、周囲の風光との調和を見落と

すこともできまい。塩田平を見おろすことのできる丘の中腹にたっている

この塔は、その周囲をめぐり歩くにつれて、さまざまな角度からながめら

れる。このように、平地を見おろす台地に塔を建てることは、中世の山

地寺院では典型的なやり方であるが、建築の美しさもたしかにこういう

配置の妙によって、倍加されているのである。

文部技官工学博士
 伊藤延男


大法寺??堂厨手子及び須弥壇i(重要文化財)

 観音堂内におかれた厨子である。なかに本尊の十一面観音像を安置して

いる。造られた年代はあきらかでない。塔と同時ではないかという見方もあるが、

資料がないので何ともいえない。むしろ、塔よりくだって、室町時代に入って

からの製作とみるのが妥当であろう。

この厨子には特殊な手法がいくつかある。たとえば、頭貫鼻の繰形の渦は

上下対称になっており、尾?根元にも同様の渦がある。こういう渦は、普通

の禅宗様にはみられないところである。しかし類例が安楽寺の塔にあることから

考えると、当地方にはかつて禅宗様の別派があったのかもしれない。厨子を

おく須弥壇も禅宗様のものである。いく段にも繰り形を重ねている。壇上には

禅宗様式の通高欄をそなえているこの須弥壇も重要文化財の指定を受け

ている。


大法寺?音堂厨手?び須弥壇i(重要文化財)

 観音堂内におかれた厨子である。なかに本尊の十一面観音像を安置して

いる。造られた年代はあきらかでない。塔と同時ではないかという見方もあるが、

資料がないので何ともいえない。むしろ、塔よりくだって、室町時代に入って

からの製作とみるのが妥当であろう。

この厨子には特殊な手法がいくつかある。たとえば、頭貫鼻の繰形の渦は

上下対称になっており、尾?根元にも同様の渦がある。こういう渦は、普通

の禅宗様にはみられないところである。しかし類例が安楽寺の塔にあることから

考えると、当地方にはかつて禅宗様の別派があったのかもしれない。厨子を

おく須弥壇も禅宗様のものである。いく段にも繰り形を重ねている。壇上には

禅宗様式の通高欄をそなえているこの須弥壇も重要文化財の指定を受け

ている。
文部技官工学博士 伊藤延男


木造十一面観音立像(重要文化財)桂材一本造り(木を寄せないで一本の木で

造る)の彫眼で像の高さは171 cm,お顔はふっくらとしていて古風で気品に満

ち、慈悲円満の相をしています。

やさしい表情に衣文を刻んだ刀法などから、藤原時代の中頃の作とみられます。

頭上には仏面10体があり、頭丁に仏面、頭上の正面側に菩薩面3面(慈悲

を施される面)、左側に瞋怒面3面(悪い行いをしたときに怒られている面)、
右側に狗牙上出面2面(善い
行いに牙を出して笑い喜ばれている面)、
拝観者からは見えない背面に
大笑面1面(あざけり笑う顔を慎む

べきとして後ろに造られた面)を表しています。


木造伝普賢菩薩立像(重要文化財)

 本尊の十一面観音と同じく桂材の一本造りです。彫眼で像の高さは107cmの小

型の像です。両目は閉じ、しもぶくれのふっくらした面相は、上品でやわらかな

表情になっていて、頭の頂の高い髻(もとどり・冠をかぶるのに便利な様に頭髪を
束ねたも
の)が目立ちます。

普賢菩薩とは、菩薩のなかでもっとも賢い仏とされ、仏の理・定・行を司る菩

薩といわれています。

この像は、左手は下に伸ばして手のひらは内側に向け、右手は臂をまげていま

すがその先は欠けています。面相の彫りや衣紋線のおとなしさなどから、十一面

観音像と同時に像造されたと考えられています。

  
 

六百八十年前の壁画(大法寺三重塔の横青木村郷土美術館にて展示)

 国宝大法寺三重塔第一層の天井に創建当時の絵が残っていますが、文

化庁の調査で壁面にも描かれていたことがわかり、文化庁の依頼を受けて平

山郁夫氏に師事し、古建築壁画等復元の第一人者馬場良治氏の手によって

復元模写されました。

馬場氏が二週間塔内に入って図取りをし、その後ほぼ二年間かけて彩色

が施され、平成16年に実寸大の復元図が完成しました。

長押下端には葉のある唐草を背景に、鳥を同じ間隔に配置し、朱・紫のぼ

かしのある花と白い花が描かれていますが、このように花・葉・鳥を絵画的

にとりいれた図柄があるのは、日本では

この大法寺三重塔と、広島県明王院五重塔,
滋賀県西明寺三重塔の三つの塔だけです。

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明王院五重塔⇒
西明寺三重塔⇒

 
十一面観音
普賢菩薩
   
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