宇陀水分神社地図

 丹塗りの朱色が鮮やかな社殿が5棟、横並びになっ

て高い杉木立を背に立っている。ふき替えたばかりの

桧皮屋根がすがすがしい。近づくと、社殿に描かれた

極彩色の草花などの絵や文様が見える。3月に保存修

理工事が終わったばかりの菟田野町の古社、宇太水分

神社に華やぎがよみがえった。

 同神社は、吉野水分(吉野町) 、都祁水分(都祁

村) 、葛木水分(徊所市)各神社とともに「大和四水

分社」として知られる。ミクマリの神は分水嶺に鎮座

し、水流の分配をつかさどる神とされる。

 だが、今回は水の神様ではなく、社殿の方に興味を

もって訪ねた。何しろ、5棟のうち3棟が国宝、2棟

が重要文化財というからすごい。さらに、極彩色の絵

や文様は神社建築では最古の室町時代後期だという。

 5棟は桧皮屋根が寿命にきたのと丹塗りの塗装が退

色したため、県文化財保存事務所が01年12月から修理

を始めた。工事は02年9月に終わったが、この過程

で、極彩色の絵や文様が柱上部などにうっすらと残っ

ていることがわかった。これを復元するため、工期を

延長して調査し、ようやく完成した。

 重文や国宝クラスの神社の社殿は、社殿を囲う瑞垣

に隠れて外からは全く見えないか、一部しか見えない

ものが多い。だが、ここの瑞垣は低いので、社殿の外

観がよく見える。絵や文様の細部も観察できる。

 国宝の社殿は同神社本殿の第一、第二、第三殿で、

互いに近接している。正面に向拝(張り出し部分)が

ある春日造りの一種で、向拝の2本の柱の頂部をつな

ぐ横架材に、藍と白色で波涛が描かれている。いか

にも水の神社らしいが、とくに中央の第二殿の絵は波

が砕け散る様が大海のような激しさだ。

 向拝の柱にも唐草文様が描かれている。文様は瑞垣

の外から見える柱の上部だけにほどこされ、下部は何

の装飾もない。

 向拝の奥の建物本体を見ると、4本の丸柱となげし

にキク、キリ、ボタンなど華やかな草花が絵画風にち

りばめられて描かれている。色は地が金箔、藍、丹

で、絵の部分が赤、緑青,白など多彩だ。

 県教委によると、宇太水分神社の本殿は、第一殿

(南殿)の棟木の銘文から鎌倉時代後期の1320年

に建立された。神社建築では非常に古く、年代がわか

る基準作として貴重という。

 極彩色の絵や文様が描かれたのは、1558年の改

修時とみられている。寺院の場合、礼拝場所の堂内の

柱などに絵を描くことは飛鳥時代にさかのぼる。神社

の場合は礼拝場所は外部だが、社殿の外側に極彩色の

絵や文様を施すのは桃山文化の時代(1573~16

14)に流行した。そのさきがけとなる試みが、山深兎

田野の地で行われていたのである。
2004-4-20 朝日新聞

(沖真治)

 宇陀市菟田野古市場の宇太水分神社は、「みくまりさ

ん」と呼ばれ、古くから親しまれてきた。文字通り水をつ

かさどる神様をまつり、北の都祁、南の吉野、西の葛木の

各水分神社と共に大和の水を守ってきた。

 天を突く高い杉木立を背に丹塗りの社殿が、全部で

5棟。うち、横一線に並ぶ3棟が本殿。連結社殿の原

初形式を今に伝える。建造が鎌倉時代末期とはっきり

しており、国宝に指定されている。摂社の春日神社本

殿、宗像神社本殿も重要文化財だ。

 社殿を囲む瑞垣越しに目を凝らすと、彩色の竜やシ

ラサギ、滝登りのコイの背に仙人の姿が見える。檜皮

葺の屋根の葺き替えなどをした2001年からの「平

成の大修理」で、極彩色の装飾も復元された。

 「水が集まるところに人が集まり、村ができ、稲作

が盛んになった。その中心が当神社だったのです」

三家一彦宮司( 74 )は厳かな物腰で由来を語る。ひょっ

こり姿を見せた氏子総代の森本泰央さん( 74 )は「子ど

もの頃、境内でよく遊びほした。薪を拾いによく裏山

に登ったもんですよ」と懐かしむ。

 4、5年前から神社を軸に「町おこし」への機運も

広がり始めている。仕掛け人で製材業を営む田中圭

一さん( 65 )は力を込めて言った。

 「みくまりさんの求心力をお借りしない手はない。

国宝に重文、ほかの町にはない宝物が鎮座されている

のですから」

 気のあった仲間が寄り合い、あれこれ話すうち、境

内で年に一度、「春祭り」を開くことがトントン拍子

で決ほった。神社の前を流れる芳野川の土手には約2

50本の桜もある。祭りも花見も一緒に楽しめる。

 春祭りは名付けて「うたの夢街道」。先月7, 8日

に3回目の祭りが開かれた。和太鼓や影絵、フラダ

ンスにコーラス、中学生のブラスバンドも出演した。

桜はほだつぼみのままだったが、祭りでは町のだれも

が主役だった。

 裏方の一人、主婦安田智子さん( 53 )は「このままじ

っとしていては廃れていくだけ。町の素晴らしさをま

ず自分たちで見直そうと動き始めた」と振り返る。こ

の春、古市場かいわいの魅力をいっぱいに盛り込んだ

ガイドマップもできた。

 田中さんは「今年の夢街道は寒かった。桜もダメだ

ったが、たくさんの人が来てくれた。もっと頑張れ

まだまだやれるということかな」と話した。
(喜田洋)2102-5-8 朝日新聞