宮寺と称せられたが、明治維新に廃寺となり

今、観音堂と!鐘楼だけが残っている。 

本尊十一面観音立像は桧材の寄せ木造りで、

塑像の心木が像内に寵められている事が注目

される。

像高二メートル六十三センチ。一見古風な印

象を受けるが、穏やかな裾の衣紋や静寂な肉

身表現、技法などから平安時代後期の模古像

と考えられる。

心木の高さは約二メートル、幅は下部で四〇

センチあり、裾の所で観音像からはみ出し

部露出している。

この心木は首のくびれを現すのみの単純な円

杜形(下部は楕円形)のもので、塑像心木の

中でも古様を示すもので、東大寺法華堂の日

光、月光像などとほぼ同じ大きさの像であっ

たと考えられる。

塑像は、我が国では天平時代に盛んに造られ

遺品も少なくないが、平安時代にはほとんど

造られていない。

この心木は天平時代のものとして大過ないだ

ろう。

本像はこの心木の鞘仏として製作されたと思

われ、その全容は破綻なく整えられていて、

この地の平安後期の菩薩像の中では抜きん出

た存在と言える。 

旧像をこのような形で伝えることは、仏教信

仰史上興味深く、しかも天平時代の等身を上

る塑像が存在していたことを示すもので、

当地の歴史の古さを証明する貴軍な資料と言
える。