はじめに                                                         


山の辺の道について

 トップページの写真をご覧下さい。
南東方向に、まくらことばうま酒の三輪山があり、山麓に沿って山の辺の道があります。
 この場所は、奈良県桜井市大字穴師付近で、北(天理)から南(桜井)に向って歩くとして、第12代景行天皇の陵を少し過ぎたところです。この陵を山辺之道上陵(やまのべのみちのえのみささぎ)といいます。また、もう少し手前に第10代祟神天皇の陵があり、山辺道勾岡上陵(やまのべのみちのまがりのおかのえのみささぎ)と古事記に書かれています。これらにしるされた山辺道は天理市石上神宮から桜井市金屋までほぼ現存している日本最古の一本の道です。
 山の辺の道に沿って大型古墳が残っており、また、道には最も古い神社、石上神宮はじめ大神神社(三輪明神)などがあります。
 写真の中に万葉歌碑の石碑が写っています。これは額田王の歌で
      うま酒 三輪の山
      あをによし 奈良の山の
      山の間に いかくるまで
      道のくま いさかるまでに
      つばらにも 見つつ行かむを
      しばしばも みさけむ山を
      心なく 雲の 
      かくさふべしや
中大兄皇子が飛鳥を捨てて、都を近江大津へ遷す時の政治的大事件の歌とされ、山の辺の道を北へ進み、曲がり角で振り返りざま、ひとしきり三輪山への郷愁と措別の情にひたったであろうと思われる場所です。桜井方面から歩かれる方は額田王らが歩いた方向と同じですので、この地点で境地を偲びながら、三輪山を振り返って頂きたいと思います。
 トップページに石上神宮の写真も入れておきました。これは、ほんの一部です。
 陸内港である海柘榴市から布留(石上神宮)を通り、奈良から山背(京都南部)に至る道は生活の道であり、官道でもありました。しかし、山の辺の道は山麓に沿って曲がっています。
   この道がつくられた当時は、平野部の多くはまだ水田がつくられず、水がたまっていた状態だったと思われます。その際を沿うようにして道がつくられました。そのために山の辺の道は曲がっていますが、標高約65mの高低差の少ない道になったと考えられます。
 後に、奈良盆地は次第に沼地から農地化され、大化の改新では条理制の施行で区画され、上つ道、中つ道、下つ道の三つの幹線が七世紀中頃に完成されます。
 幹線ができたあとにも道に沿って古い神社がありますが、大化の改新ごろまでは土を盛り上げて塚を築くいわゆる古墳は貴族・豪族であったが、一般の人々は山の奥や森の中などにほうむる(捨てた)こともあってか、先祖から伝えられた信仰の道となっていきます。
 山の辺の道の近くには第10代祟神天皇・第11代垂仁天皇・第12代景行天皇が皇居を置いたといわれ、祟神天皇の磯城瑞籬宮という宮もあります。
 初瀬川を陸内港ととして栄えた市場海柘榴市もありました。またこの港は仏教伝来の港でもありました。
 山の辺の道は古代文化の華さいた物語と多くの歌があります。
倭建命(=日本武尊 やまとたけるのみこと)の歌もあります。
      大和は 国のまほろば たたなずく   青垣 山こもれる 大和し 美わし 

 平安時代にはいつて、長谷の観音信仰がさかんになると天皇貴族がこの道を初瀬へ牛車で向いました。海石榴市は伊勢詣でや長谷寺詣での宿場町として有名になります。
 現在、山の辺の道は大和青垣国定公園、東海自然歩道に指定され四季を通じて散歩ができます。
最後に井上靖の言葉をお贈りしておきます。
 ― 散策コースとしてこれだけ贅沢な道はないかも知れぬ。万葉の歌で織りなされた道を歩いていくようなものである ―


ホームページについて

 「散策ポイント」「略図からポイント」「コマ送り」「散策一覧表」の四つから自由にご覧いただけます。
 「散策ポイント」は写真から一挙にポイントにリンクして頂けますが、飽くまで主な所として取り上げました。
 「略図からポイント」は地図上の山の辺の道から、各ポイントがどのような位置にあるかをみて頂きたいと思います。
 「コマ送り」は山の辺の道を正面を向いて、実際に歩き、時には左右の景色をみながらということを念頭において作りました。
天理から桜井、逆に桜井から天理と歩く方向によって道の姿も異なりますので、両方から作りました。
歩いた後も思い出を辿って頂けたらと思います。
また、主なポイントから距離表をまとめておきましたので参考にして頂きたいと思います。
 「散策一覧表」は山の辺の道にある具体的なポイントは勿論、案内の中にでてくるものについても、目の奥で散策して頂けるように出来るだけ多く取り入れました。
 「山の辺の道 万葉歌碑」は山の辺の道に設置されているものの中で、川端康成、棟方志功、千宗室など著名な方の筆によるものを取り上げました。これらは独立したテーマとして作っています。これらの拓本をとりにくる方々も多くおられるようです。
 写真を比較的多く取り入れてありますが、写真の大小を問わず、写真からリンクする場合が多いために、できるだけマウスを当てて見てください。
 案内した場所については「地図」でくどい程、意識してMapionにリンクさせて頂いていますのでご確認下さい。
  
 相互リンクを希望致しますのでメール js@sakuwa.com をお待ちしています。

 山の辺の道を歩き、歩いた後も私のホームページで思い出を辿って頂ければ幸いです。山の辺の道にわざわざお越し頂いた方々に、良い思いでとなることを心からお祈り致します。


      天理市在住 佐桑民英