3 夕ざらば かはず鳴くなる


歌 作者不詳
 巻10-2222 
筆 樋口清之
地図
暮不去
河蝦鳴成
三和河之
清瀬音乎
聞師吉毛
ゆうさらば
かはずなくなる
みわがわの
きよきせのとを
きかくしよしも
夕さらば
かわず鳴くなる
三輪川の
清き瀬の音を
聞かくし良しも
夕方にはいつもかじかの鳴く三輪河の清い瀬の音を聞くのは
よいものだよ。

 この初瀬川は、大和川に至る。
外鎌山(朝倉富士)292.5mその南方に
舒明天皇陵
がある。
倉橋にある祟峻天皇陵
多武峰は南方に位置する。
 初瀬川畔一帯は第29代欽明天皇が置かれ、
552年百済の聖明王から初めて釈迦仏の
金銅像や経典を献上して仏教が伝えられた地
である。

 聖明王から釈迦仏の金剛像一躯と経諭若干巻
物等を献上した。
くわしく
 欽明13年(552)に仏教が百済から日本へ伝えられると、それを受け入れるか否かで朝廷内で
意見が分かれた(実際には蘇我馬子と物部守屋の勢力争いに絡んだ対立)。
 蘇我氏は仏教を受容して寺院の建立を積極的に行った。
 蘇我馬子が建立した法興寺(飛鳥寺)は日本最初の本格的な伽藍で、豊浦寺は僧寺の飛鳥寺と
対になる尼寺として造営された。このほかにも蘇我倉山田石川麻呂山田寺を建立するなど、
蘇我氏の同族が寺院を建立している。
 公伝(国から国)としては552年に伝わったが、それ以前にも私伝として入っていた。
山田寺 仏教伝来 豊浦寺
仏教伝来の地  敷城島 仏教のはじまり 
「日本国」誕生の舞台 仏教伝来地碑 磯城金刺宮
飛鳥時代とは 水路で大和へ   

ギリシャ・ローマ・インド、それは古代の日本人には現代人に

とっての宇宙に匹敵するような、否それ以上に、認識すらされて

いない遥かな世界だった。

にもかかわらずシルクロードを経て、遼遠の地の文明・文化は

次第に東へ東へと伝播し、森羅万象を神と崇め原始的信仰生活を

おくっていた人々に、多大な刺激と影響を与えた。それがシルク

ロードの終着駅・奈良に漂着した、文明・文化を満載した仏教と

いう名の巨大な船だった。

以来わが祖先たちは奈良の地に、自然への崇敬と仏教とを融

合させた華麗な文化の花々を咲かせる。

いまも奈良には、古代の人々の息吹をとどめる情趣が残存し

ており、心の耳を傾けさえすれば、それらの息吹を聞き取ること

が出来そうだ。きっと私たちに先駆けて古代の息吹を聞き取っ

たのが、奈良を愛した文士たちだったに違いない。


   奈良大学名誉教授 浅田隆氏