大和三山

　三つの山は古来、有力氏族の祖神など、この地方に住み着いた神々が鎮まる地として神聖視され、その山中や麓に天香具山神社、
畝火山口坐神社、耳成山口神社などが祀られてきた。
また、皇宮造営の好適地ともされ、特に藤原京の造営に当たっては、東・西・北の三方にそれぞれ香具山・畝傍山・耳成山が位置する立地が、
宮都を営むうえでの重要な条件にされたと考えられる。

　大和三山は、奈良盆地の南部に位置し、香具山（１５２ｍ）・耳成山（１４０ｍ）・畝傍山（１９９ｍ）の三つの独立した丘陵の総称をいう。
いずれも標高２００ｍ以下の低い山だが、平野にあるのでよく目立つ。
　飛鳥の象徴となる大和三山、どれもすっきりした山容と配置をもっている。

　畝傍山と耳成山は、ともに西の二上火山（阿蘇火山系の山）の連続であり、香具山は多武峰山塊の麗にある侵食残丘である。
それらが、平野の上に置いたように見えるのは、かって大和平野が湖の底であったとき、これらの山の麗まで沈積物が平らに堆積したので、
山麓が沈んで見えないからである。大和三山は国の名勝に指定。　

朝風峠（明日香風）	天降る神の原点	藤原京、平城京の基準線
茅原大墓古墳　盾持人埴輪	唐招提寺への道　大和路　東山魁夷大和路	万葉歌碑東山魁夷
万葉を旅する	飛鳥・藤原の宮都

出雲のアボニカミ（阿菩大神）という神様が、香具山と耳成山の二人の男が、畝傍山を妻にしようと争っているのを聞いて、仲裁のため播磨の国まで来たところ、争いがおさまったので、この国にとどまった。「万葉集」巻一には、　香具山と耳梨山と争（あ）いしとき立ちて見に来し印南国原　（香久山と耳成山が妻争いをしたとき、阿菩の神が、この印南原まで見にやって来たのです。）　　という歌がのこっている。古代には、この話はよほど有名であったらしい。また、その「万葉集」には、中大兄皇子　有名な長歌が出ている。これは、中大兄皇子が、その弟の大海人皇子　と額田王（ぬかだのおおきみ）を中にはさんで三角関係にあったことを、みずから大和三山の妻争いの伝説にたとえ、三角関係というものが、むかしからあったからこそ、いまの自分達も、こうして妻争いをするのだろう、と告白した歌である。　また、どの山が男でどの山が女であるかと言えば、説が分かれる。香具山・耳成山が女で畝傍山が男。香具山・耳成山が男で畝傍山が女。香具山が女で畝傍山・耳成山が男。　　香具山は　畝火愛（お）しと　耳梨と　相争いき　神代より　かくにあるらし　古昔も　然にあれこそ　うつせみも　嬬（つま）を　争うらしき　（巻一）　　この妻争いが原因で、この兄弟はたいへん仲が悪くなった。大海人皇子が、中大兄皇子の皇太子大友皇子（弘文天皇）を攻め滅ぼした壬申の乱も、ここに原因がある、という説もある。　　大和三山への心情を歌った万葉集の長歌、藤原宮御井の歌として、　青々とした香具山は宮の東の御門に春の山のように茂り、畝傍の瑞々（みずみず）しい山は西の御門に鎮まる瑞祥（ずいしょう）の山。耳成の青菅の山は背面の北御門に神々しくそびえ立つ・・・。
	葛城山山麓から望む大和三山、左から耳成山・畝傍山・香具山。
三山を一度に眺めるには、藤原宮跡に行くか、甘樫丘に登ると良い。また、大神神社（三輪明神）の近く大美和の杜からも眺められる。